サロンの物件探しで、契約前に見ておきたいこと

物件・契約

※この記事にはPRを含みます。

※内容は2026年8月時点のものです。


物件を見に行き始めた方から、よくこんなお声を聞きます。

「内見に行っても、どこをどんなふうに見ればいいのか分からない」

「不動産屋さんの説明、真面目な顔で聞いてはみるけど、正直半分くらいしか分かってない」

「契約書を見せられたけど、何を確認すればいいの??」

わかります。めちゃくちゃわかります。

だって、わたしたちは美容の技術のプロであって、不動産のプロではないのですもの。爪のことなら何時間でも語れるのに、「保証金の償却が」とか言われた瞬間に頭がフリーズする。あれ、本当にしんどい。

本日は、これからサロン物件(特に1人~少人数規模で施術するためのスペースがあればOKな物件を探している方)に向けて、わたしが実際に物件を探して契約するまでに「これ、先に知っておきたかった…!」と思ったことを、つらつらと書いてみます。

専門用語はわかりやすく言い換えていきますので、身構えずに読んでいただけたら嬉しいです。


  1. 先にお伝えしたい、たった3つのこと
    1. 1, 確認は全部「契約する前」に終わらせる
    2. 2, 家賃の安さではなく「総額」で見る
    3. 3, 焦って決めるのが、いちばん危ない
  2. 手順1|物件サイトを開く前に、条件を紙に書く
    1. なぜ「家賃は月商の10%以内」なのか
  3. 手順2|物件には2種類あります(ここで、場合によっては数百万円変わります)
    1. スケルトン物件
    2. 居抜き物件(いぬきぶっけん)
    3. 正直に言うと、居抜きは「安い」とは限りません
  4. 手順3|探し方。ここでいちばん大事なのは「担当者」です
    1. なぜ直接行くのが効くのか
    2. そして、これが本題です
  5. 手順4|「事務所使用OK」でも、サロンはお断りされます
    1. わたしがぶつかった壁
    2. なぜそうなるのか
    3. だから担当者のやる気が効いてくる
    4. 探すときに使える言葉
  6. 手順5|内見で見る12項目
    1. 1, 電気容量(でんきようりょう)
    2. 2, 給排水(きゅうはいすい)
    3. 3, 換気(かんき)
    4. 4, エアコンは「設備」か「残置物」か ★これは絶対に
    5. 5, 搬入経路(はんにゅうけいろ)
    6. 6, 看板(かんばん)
    7. 7, 上下階・お隣のテナント
    8. 8, 用途地域と管理規約
    9. 9, 保健所への届出が要るかどうか ★業種で変わります
    10. 10, インターネット回線 ★見落としがちですが、けっこう重い
      1. 内見のときに確認すること
      2. 家庭用と事業用、どちらにするか
      3. 固定電話(ひかり電話)は要るのか
      4. 申し込み窓口によって、条件が変わります
    11. 11, 駐車場・駐輪場
    12. 12, ゴミ出し
  7. 手順6|お金の話をします
  8. 手順7|初期費用は、交渉できます
    1. 実際にあった話
    2. お伝えしたいこと
  9. 手順8|「重要事項説明」は、質問できる場です
    1. 原状回復の範囲は、必ず書面で
  10. 内見に持っていくチェックリスト
  11. よくいただくご質問
    1. Q. 「すぐ埋まりますよ」と言われて焦っています
    2. Q. 不動産屋さんに何を聞けばいいか分かりません
    3. Q. 知識がなさすぎて、恥ずかしいです
  12. 物件が決まったら、実はここからが忙しいのです
  13. おわりに

先にお伝えしたい、たった3つのこと

細かい話に入る前に、これだけは押さえておきましょう!

1, 確認は全部「契約する前」に終わらせる

契約書にハンコを押した瞬間から、その物件はあなたの責任になります。

例えば、あとから「エステの機械が電力不足で動かない」と分かっても、大家さんは助けてくれません。戻れないのです。

2, 家賃の安さではなく「総額」で見る

家賃が5万円安くても、内装工事に200万円多くかかったら意味がありません。毎月出ていくお金と、最初にドカンと出ていくお金。この両方をセットで見ます。

3, 焦って決めるのが、いちばん危ない

「他にも問い合わせが入ってまして」と言われると、そりゃ焦ります。常套句よね、わたしも焦りました。

でも、焦って決めた物件で数年間ずっとモヤモヤし続けるほうが、よっぽど損。良い物件は確かにすぐ埋まりますが、物件は毎週新しく出てきます!


手順1|物件サイトを開く前に、条件を紙に書く

いきなり探し始めると、目移りして判断がぶれます。これは本当に。

「駅近だけど狭い物件」と「広いけど駅から10分の物件」を並べられた瞬間、自分が何を優先していたのか分からなくなります。

ということで、探す前に紙に書きます。

決めること考え方
月の家賃の上限予想月商の10%以内に収めると安全、とよく言われます
広さネイル1〜2席なら5〜10坪ほど。エステ・リラクの個室を作るならもう少し
エリア今のお客様が通える範囲かどうか
階数1階は家賃が高いけれど目立つ。2階以上は安いけれど、看板と入口の分かりやすさが勝負

月商(げっしょう) … 1ヶ月の売上のことです。

なぜ「家賃は月商の10%以内」なのか

理由はシンプルで、家賃は売上がゼロの月でも、容赦なく出ていくお金だからです。

開業してすぐは、お客様が定着するまで数ヶ月かかることがあります。その間も、家賃は毎月きっちり発生する。ランニングコストというやつです。この、ランニングコストが高いと、その数ヶ月を耐えきれずに資金が尽きてしまいます。

ただ、これはあくまで目安のひとつ。例えば立地が良ければ高い家賃でも回収できることもありますし、業種によっても変わります。ご自身の事業計画に合わせて調整なさってください。

あと、広さについては内装業者さんに先に相談すると精度が上がります。 「この施術をこの席数でやりたい」と伝えると、必要な坪数を教えてくれますので。


手順2|物件には2種類あります(ここで、場合によっては数百万円変わります)

スケルトン物件

スケルトン物件 … 内装が何もない、コンクリートがむき出しの状態。「骨組みだけ」という意味です。

好きなように作れるので、理想のサロンにできます。そのかわり内装工事費が全部かかりますし、工事期間も長い。その工事期間中も家賃は発生しますので、そこも計算に入れておきたいところ。加えて退去時には原状回復義務があるので、内装をスケルトンに戻すのに何百万かかることもあります。

居抜き物件(いぬきぶっけん)

居抜き物件 … 前に入っていたお店の内装や設備が、そのまま残っている物件です。

内装費をぐっと減らせますし、前が同業種なら水回りや電気がそのまま使えることも。工事期間も短くて済みます。

ただし、造作譲渡料というものがかかることが多いです。

造作譲渡料(ぞうさくじょうとりょう) … 前のお店が残していった内装・設備を「買い取る」ためのお金。数十万円〜数百万円になることもあります。大家さんではなく、前のお店に払うのが一般的です。

正直に言うと、居抜きは「安い」とは限りません

ここ、声を大にしてお伝えしたいところ。

居抜きって、写真で見るとすごく魅力的に映ります。「もう内装できてる!このまま開けられそう!」と思ってしまう。

でも、こういうことが起きます。

  • 造作譲渡料150万円を払った
  • エアコンと給湯器が、実は寿命間近だった
  • 交換で80万円

結局スケルトンから作るのと変わらなかった、というパターン。

ですから、造作譲渡の対象に何が含まれているのか、それぞれ何年使っているのか。これを必ずリストとなるべく証拠書類(エビデンス)を出してもらってください。さらに造作譲渡契約時に契約内容に「すぐに壊れたら保証してもらう」部類の文言が入っていると尚安心ですね。 口頭の「まだ全然使えますよ」は、残念ながら当てになりません。

あと、前のお店のイメージが残るという地味な問題も。内装のテイストが自分の世界観と違うと、あとあと気になってきます。しっかり内見して潰しましょう。

📖 あわせて読みたい

居抜きを検討されるなら、造作譲渡の落とし穴を先に知っておいてください。原状回復の引き継ぎなど、あとから効いてくる話をまとめています。

居抜き物件の「造作譲渡」とは? 契約前に確認したい7つの落とし穴


手順3|探し方。ここでいちばん大事なのは「担当者」です

探すルートは3つあります。

ルート特徴
不動産ポータルサイト誰でも見られる。ただし良い物件は載る前に決まることも
店舗物件の専門サイト事業用に絞られているので効率が良い
地元の不動産会社に直接行くこれがいちばん効きます

なぜ直接行くのが効くのか

ネットに出ていない物件があるからです。

不動産会社は、良い物件が出たとき、すでに顔を知っている人に先に声をかけます。ネットに載せる前に決まってしまう物件が、実際にあります。

ということで、探し始めたらすぐ、地元の不動産会社を何社かまわって「こういう条件でサロンを開きたいんです」と伝えておく。物件が出たときに連絡をもらえる立場になっておく。 これだけで、目に入る選択肢がかなり変わります。

行くときに伝えるとよいこと。

1, 業種を具体的に(ネイル/まつエク/エステ/美容室)

2, 予算の上限を正直に

3, 希望エリアと広さ、一日何人ほど来店予定か

4, いつ開業したいか

4がけっこう大事で、時期を言うと本気度が伝わって、優先して連絡をもらえるようになります。

(最初は「まだ何も決まってないのに行っていいのかな」と思っていたのですが、全然大丈夫でした。むしろ早いほうが喜ばれます)

そして、これが本題です

いくつかの不動産会社に問い合わせをして気づいたことがあります。

担当者のやる気で、良い物件に巡り合えるかどうかが変わる。

これは精神論ではなくて、はっきりした理由があります。次でお話しします。


手順4|「事務所使用OK」でも、サロンはお断りされます

マンションの一室でサロンを開こうと考えている方に、いちばんお伝えしたいのがここです。

わたしがぶつかった壁

わたしはマンション型のサロンを開きたくて探していました。なので、SOHOや事務所使用OKと書かれた物件を中心に見ていたのですが、不動産会社を通じて問い合わせてもらうと、こう返ってくるのです。

「従業員だけならいいけど、不特定多数のお客さんが出入りするサロンを用途とするなら認められない」(上記で3に『一日何人ほど来店予定か』を伝えるのはここにつながってきます)

これが、本当に多かった。体感で、50件中2、3件しかサロンとして使わせてもらえませんでした。

つまり、ネットに「事務所使用OK」と大きく書いてあっても、管理会社に「ネイルサロンできますか?」と聞いた瞬間に「無理ですね」と返ってくるわけです。

(これは10年近く前の話なので、今は変わっている部分もあるかもしれません。そこは差し引いて読んでいただけたら…!)

なぜそうなるのか

事務所とサロンでは、建物にとっての意味がまるで違うからです。

事務所なら、出入りするのはそこで働く数人だけ。でもサロンは、知らない人が毎日入れ替わり立ち替わり出入りします。マンションの他の住人からすると、それは不安材料になる。だから管理規約や管理組合の判断ではねられます。

管理規約(かんりきやく) … マンションのルール集です。

管理組合(かんりくみあい) … そのマンションの持ち主たちで作る、運営のための組織です。

大家さんが「いいですよ」と言っても、管理組合がNGなら通りません。ここが落とし穴。

だから担当者のやる気が効いてくる

「事務所使用OK」の物件を100件見つけても、実際に契約まで至れるのはそのうち数件。

その数件をあぶり出す作業が必要になります。管理会社に1件ずつ「サロンとして使えますか」と確認していく、地道な作業。

これをやってくれる担当者と、やってくれない担当者がいます。

わたしは最初、数社の不動産会社に並行してお願いしていました。でも、

  • 連絡が速い
  • 伝えた条件で、自分から色々探して共有してくれる

この2つを満たす担当者がいた1社に、すぐ絞りました。結果、そこを通じて契約しています。

複数社に頼むのは最初だけでいい、というのがわたしの結論です。合う担当者が見つかったら、そこに集中したほうが早い。

探すときに使える言葉

問い合わせの時点で、こう伝えておくと無駄足が減ります。

「不特定多数のお客様が出入りする(1日に~人のお客様が出入りする)、サロンとしての使用です。管理会社さんに確認していただけますか」

最初にこれを言っておけば、内見してから断られる、という一番辛いパターンを避けられます。

📖 あわせて読みたい

マンション型を考えている方は、こちらに詳しくまとめました。通りやすい物件の傾向や、見つからないときの代替案まで書いています。

マンションの一室でサロンは開ける? 「事務所使用OK」でも断られる理由


手順5|内見で見る12項目

内見(ないけん=実際に部屋を見に行くこと)って、どうしても雰囲気や日当たりに気を取られます。「わあ、ここ可愛くできそう」って。

でも! 本当に大事なのは、設備です。地味なやつ。

スマホのメモにこの12項目をコピーして、その場で埋めていくのがおすすめ。

1, 電気容量(でんきようりょう)

電気容量 … その部屋で一度に使える電気の量のこと。「アンペア(A)」という単位で表します。

サロンにとって、ここが最大の落とし穴だとわたしは思っています。

エステ機器、ネイルの集塵機(しゅうじんき=削りカスを吸う機械)、ドライヤー、給湯器、エアコン。これらを同時に使うと、住宅用の一般的な容量では足りないことがあります。

見ておくこと。

  • 分電盤(ぶんでんばん=ブレーカーの箱)を見せてもらう
  • 今の契約アンペア数を確認する
  • 足りない場合、増やせるのか/いくらかかるのか

そして怖いのが、建物全体の電気容量に空きがないと、そもそも増やせないことがあるという点。こうなると、どんなに気に入っても諦めるしかありません。

契約前に、必ずチェックしましょ。

2, 給排水(きゅうはいすい)

水を出す設備と、流す設備のこと。

  • シャンプー台やベッド周りに水を引けるか
  • 排水管がどこにあるか(遠いと工事費が跳ね上がります)
  • 給湯器はあるか、何年くらい使っているか
  • お湯の量は足りるか

3, 換気(かんき)

ネイルの溶剤、パーマ液、消毒用アルコール。匂いはご近所トラブルの原因になります。

換気扇やダクトがあるか、窓は開くか。そして上下階・お隣に何が入っているか。

4, エアコンは「設備」か「残置物」か ★これは絶対に

これ、契約書で必ず確認してください。見た目は同じエアコンでも、扱いがまったく違います。

設備(せつび) … 大家さんの持ち物。壊れたら大家さんが直してくれます。

残置物(ざんちぶつ) … 前の人が置いていっただけのもの。壊れたら自腹です。

真夏にエアコンが止まって、「それ残置物なので自己負担です」と言われる。想像するだけでちょっと具合が悪くなりますよね。壊れたって明日にはまたお客様が来るうえに、数十万円の想定外の出費です。

5, 搬入経路(はんにゅうけいろ)

エステベッド、シャンプー台、大きな什器(じゅうき=棚やカウンター)。入口を通らないと、そもそも入りません。

  • 玄関ドアの幅と高さ
  • 階段の幅、曲がり角
  • エレベーターのサイズ(奥行きも忘れずに

6, 看板(かんばん)

  • 看板を出せるか、出せる場所はどこか
  • 別途、看板の使用料がかかるか
  • 大家さんの許可は要るか

特に2階以上の物件は、看板が出せるかどうかで集客の仕方がまるっきり変わりますので、ここは念入りに。看板を出さず敢えて『プライベート感』を出すのも最近流行りですが、その場合新規集客に時間やお金というコストをかける必要があります。

📖 あわせて読みたい

その「時間やお金をかける集客」を、具体的にどう組み立てるか。開店前にやることからまとめました。

サロン開業の集客、何から始める? 開店前にやることと、リピートの育て方

7, 上下階・お隣のテナント

飲食店の上や隣だと、油の匂いや虫の心配があります。逆に、こちらの音や匂いがご迷惑にならないかという視点も持っておきたいところ。

8, 用途地域と管理規約

用途地域(ようとちいき) … その土地に建てていい建物の種類を、行政が決めた区分のこと。

手順4でお話しした通り、マンションの場合は管理規約と管理組合の許可が要ります。書面で確認してください。

9, 保健所への届出が要るかどうか ★業種で変わります

ここ、業種によってまったく違うので要注意です。

  • 美容室・まつげエクステ … 美容師法の対象。保健所への届出が必要で、施設の構造や設備に基準があります
  • ネイル・エステ … 美容師法の対象外とされるのが一般的ですが、自治体によって扱いが違います

いちばん避けたいのは、契約したあとに「この物件、基準を満たせない」と判明すること。これは本当に取り返しがつきません。

ですから、契約する前に、その地域の保健所に相談してください。 「この住所で、この業種をやりたいのですが」と伝えれば教えてもらえます。相談は無料です!

  • 厚生労働省(生活衛生関係の情報):https://www.mhlw.go.jp/
  • お住まいの自治体の保健所(「〇〇市 保健所 美容所」で検索)

10, インターネット回線 ★見落としがちですが、けっこう重い

予約システムもレジも決済端末も、ネットが繋がらないと動きません。

そして怖いのが、光回線の工事は思った以上に時間がかかるということ。建物の状況によっては、申し込みから開通まで1〜2ヶ月かかることがあります。引っ越しシーズンはもっと待つことも。

内装が完成しても、ネットが来ていなければお店は開けられません。

内見のときに確認すること

  • 建物にすでに光回線が入っているか(入っていれば早い)
  • 部屋まで配線が来ているか
  • 工事が必要な場合、大家さんの許可が要るか
  • どの回線事業者が使えるか(建物によって決まっていることがあります)

「あとで調べればいいや」と思いがちですが、物件が決まったらその日に動くくらいでちょうどいいです。

家庭用と事業用、どちらにするか

自宅用の回線でもお店は回せます。ただ、事業用にはサポートの手厚さトラブル時の対応の速さといった違いがあります。

決済が止まると営業が止まるので、「繋がらないときにすぐ相談できるか」を軸に考えるといいかなと思います。

固定電話(ひかり電話)は要るのか

これ、意外と迷うところだと思います。「携帯があるからいらないのでは?」と。

わたしの考えでは、あったほうがいいです。 理由は2つ。

1, 予約サイトへの掲載で、電話番号が必要になることが多い

2, 固定電話があると、お客様からの信用が違う(携帯番号だけのお店は、少し不安に見えることがあります)

光回線を申し込むとき、ひかり電話も一緒に契約できます。 あとから追加するより手間が少ないので、最初にまとめて決めてしまうのがおすすめです。

申し込み窓口によって、条件が変わります

ここが少しややこしいところ。

回線そのものはNTTのフレッツ光や光コラボレーションが中心になりますが、申し込む窓口はいくつもあって、キャッシュバックなどの特典が違います。

ひかり電話・光回線の申し込み窓口を見てみる

ただし、特典には必ず条件がついています。 ここは正直にお伝えしておきますね。

  • オプションへの加入が条件になっていないか
  • いつ、どうやって受け取れるのか(開通から数ヶ月後、申請が必要、というパターンが多いです)
  • 契約期間の縛りと、途中解約したときの違約金

「キャッシュバック◯万円」の数字だけで決めないでください。 条件を読んで、それでも得なら申し込む。この順番で。

開業準備は忙しいので、申請を忘れて受け取り損ねるのがいちばんもったいないパターンです。カレンダーに入れておきましょう。

11, 駐車場・駐輪場

お客様が車や自転車でいらっしゃる立地なら死活問題。近くのコインパーキングの位置と料金も、見ておくと安心です。

12, ゴミ出し

お仕事で出るゴミは、家庭ゴミとして出せません。事業系ごみとして、有料で処理業者にお願いするのが一般的です。

ゴミ置き場の場所、回収のルール、費用。開業前に確認しておきましょう。


手順6|お金の話をします

物件にかかるお金は、家賃だけではありません。最初にまとまった額が要ります。

項目目安説明
保証金家賃の6〜12ヶ月分大家さんに預けるお金。住宅でいう敷金の店舗版
礼金0〜2ヶ月分大家さんへのお礼。返ってきません
仲介手数料家賃1ヶ月分+消費税(上限)不動産会社への手数料
前家賃1ヶ月分翌月分を前払い
火災保険数万円加入が条件のことがほとんど
保証会社利用料家賃の0.5〜1ヶ月分保証人の代わりになる会社への費用
造作譲渡料0〜数百万円居抜きの場合
内装工事費数十万〜数百万円業種と広さによる

保証金の「償却(しょうきゃく)」にご注意を

預けた保証金のうち、退去時に返ってこない分を「償却」といいます。「保証金10ヶ月・償却2ヶ月」なら、2ヶ月分は最初から返ってこないという意味。契約書に必ず書いてありますので、確認しておきましょう。

家賃20万円の物件だと、初期費用が200〜300万円になることも珍しくありません。

ここを甘く見積もると、内装を削ることになります。せっかくの開業なのに、そこで妥協するのは切ない…!

創業のときの資金調達については、日本政策金融公庫が公的な融資制度を扱っています。


手順7|初期費用は、交渉できます

ここ、わたしが当時いちばん知らなかったことです。

恥ずかしながら、初期費用を交渉できるという発想が、そもそもありませんでした。 提示された金額は決まった金額だと思い込んでいたのです。

実際にあった話

最初はB社の担当者と内見に行って、すごく気に入った物件がありました。駅からとても近くて、条件も申し分ない。

ただ、家賃相場の高いエリアだったこともあり、入居時の費用が予算を40万円以上オーバーしていました。

「せめて礼金の4ヶ月を半分の2ヶ月にしてくれたら入れるんだけどな~」

そう思いながら、諦めました。

その日の午後、A社の担当者から連絡が来ます。A社は、連絡が速くて自分から色々探してくれる、上記で記載したやる気のある担当者がいたところです。

「いい物件ありましたよ!」

送られてきたのは、その日の午前中にB社で内見した、まさにその物件でした。

正直にお伝えするしかありません。

「あの、すみません。正直に申し上げるんですけど、実は本日わたしもいいなーと思って、この物件、別会社さん経由で内見したんですよね。でも初期費用が40万ほどオーバーしておりまして、諦めました」

「なるほど。管理会社と礼金の交渉はしましたか?」

「え? 交渉? そんなことできるんですか!?」

「できますよ。無理と言われるかもしれませんが、言うのはタダなんで! 今ちょっとその旨連絡してみますね」

そして、あれやこれやしているうちに————

初期費用が30万円くらい安くなりました。

あれにはめちゃくちゃ感動したなあ。担当は渋いおじ様でしたが、『い、い、イケメン~! 頼りになるぅ~~~!!』と心の中で叫びました。笑

まだ少しオーバーはしていましたが、「いや、物件は水物! これはいけということだ!」と、その後すぐ契約しました。

お伝えしたいこと

言うのはタダです。

もちろん、断られることもあります。強気の物件なら「1円も下げません」と言われるでしょう。それでも、聞いてみる価値はあります。

交渉の余地がありそうなもの。

  • 礼金(いちばん動きやすいと言われます)
  • フリーレント(=最初の数ヶ月の家賃を無料にしてもらうこと)
  • 保証金の額や償却
  • 入居日の調整(工事期間の家賃を減らす)

そして、この交渉をやってくれるかどうかも、担当者次第です。手順4でお話しした「担当者のやる気」は、ここにも効いてきます。

⚠️ ただし、交渉には限度があります。強く出すぎると「面倒な入居者」と見なされて、審査で不利になることも。あくまで「ダメ元でお願いしてみる」くらいの温度感がちょうどよいかと思います。


手順8|「重要事項説明」は、質問できる場です

重要事項説明(じゅうようじこうせつめい) … 契約する前に、その物件の大事な情報を説明してもらう手続き。宅地建物取引士という国家資格を持つ人が行うことが、法律で決められています。

これ、形式的な手続きだと思って聞き流してしまいがちなのですが、あなたが堂々と質問できる、公式な場です。

ここで聞いておきたいこと。

1, 契約は普通借家定期借家

2, 保証金の償却は何ヶ月分か

3, 原状回復の範囲はどこまでか

4, エアコン等は設備か残置物か

5, 中途解約するときの条件と違約金

6, 電気容量を増やせるか

普通借家契約(ふつうしゃっかけいやく) … 通常は更新できる契約。借りる側が守られています。

定期借家契約(ていきしゃっかけいやく)期間が来たら必ず終わる契約。更新できたケースも周りから聞いていますが、基本的に更新がないと思ったほうが得策です。

定期借家は、家賃が相場より安いことがあります。でも期間が終われば出ていかなければなりません。せっかくお客様がついた場所を、離れることになる。

「再契約できる場合もありますよ」と言われることもありますが、それは保証ではありません。ここは慎重に。

原状回復の範囲は、必ず書面で

原状回復(げんじょうかいふく) … 退去するとき、借りたときの状態に戻して返すこと。

前述しましたが、店舗の場合、スケルトン(何もない状態)に戻して返す契約が一般的です。これに数十万〜数百万円かかります。

そして居抜きで入った場合、前のお店の内装まで撤去する義務を負うことがあるのです。「わたしが作ったものじゃないのに?」と思いますよね。でも契約書にそう書いてあれば、そうなります。

ここは文言を、しっかり確認してください。


内見に持っていくチェックリスト

探す段階

  • □ 「サロンとして使えるか」を管理会社に確認してもらったか
  • □ 担当者は、連絡が速く、自分から探してくれる人か

設備

  • □ 電気容量は足りるか。増やせるか。いくらかかるか
  • □ 給排水は引けるか。排水管はどこか
  • □ 給湯器はあるか。何年使っているか
  • □ 換気設備はあるか
  • □ エアコンは「設備」か「残置物」か
  • □ インターネット回線を引けるか

建物・立地

  • □ 什器・ベッドの搬入経路は確保できるか
  • □ 看板を出せるか。費用はかかるか
  • □ 上下階・お隣のテナントは何か
  • □ 駐車場・駐輪場はあるか
  • □ 事業系ごみの出し方と費用

法律・行政

  • □ 用途地域・管理規約で営業できるか(書面で
  • □ 保健所に相談したか(契約前に必ず

お金・契約条件

  • □ 礼金・フリーレントの交渉をしてみたか
  • □ 普通借家か、定期借家か
  • □ 保証金と償却は何ヶ月分か
  • □ 原状回復の範囲はどこまでか
  • □ 中途解約の条件と違約金
  • □ 造作譲渡の対象リストと、各設備の使用年数(居抜きの場合)

よくいただくご質問

Q. 「すぐ埋まりますよ」と言われて焦っています

わかります! あの一言、効きますよね。

条件の良い物件が早く決まるのは事実です。ただ、焦って決めた物件で数年間過ごすリスクと、天秤にかけてみてください。

特に電気容量と保健所への確認だけは、どんなに急かされても飛ばさないでいただきたいです。この2つは、あとから取り返しがつかないので。

Q. 不動産屋さんに何を聞けばいいか分かりません

上のチェックリストを、そのまま画面で見せて「これを確認したいんです」で大丈夫です。

むしろ、確認したい項目を持っている人は、不動産会社からも真剣に扱ってもらえます。「この人は本気だな」と伝わりますので、舐められることが減ります!

Q. 知識がなさすぎて、恥ずかしいです

こんなことは、本当に本当に思わなくて大丈夫です。

わたしたちは美容の技術のプロであって、不動産のプロである必要はありません。 分からない言葉が出てきたら、その場で「すみません、それはどういう意味ですか」と聞いてください。それは恥ずかしいことではなくて、あなたの権利です。

(わたしも最初、「償却」を「しょうきゃく…?何を焼くの?」と本気で思っていたことは内緒です)


物件が決まったら、実はここからが忙しいのです

物件が決まると、ホッとして一息つきたくなります。

でも実は、ここから開業日までがいちばん慌ただしい。 なぜかというと、この時期にお店の仕組みを全部そろえる必要があるからです。

決めるものなぜ要るか
キャッシュレス決済審査に時間がかかります。間に合わないと現金のみに
レジ(POSレジ)売上の記録。確定申告のときに効いてきます
予約システム電話対応に追われないために
会計ソフト開業初日からの記録が必要です
税理士に頼むか自分でやるか、任せるか

特に決済端末は要注意です。 申し込んでから審査があって、機械が届くまでに時間がかかります。「オープン日に決済が使えない」というのは、本当によくあるトラブル。

内装のことで頭がいっぱいになる時期ですが、この5つは並行して進めておくと、あとがぐっと楽になります。

📖 あわせて読みたい

お金の全体像を先に掴んでおきたい方は、こちらから。費用を7つに分解して、自分の場合を計算できる形にしました。

サロン開業のお金、結局いくら必要? 費用の全体像を分解します

決済の選び方は、こちらにまとめています。手数料より先に見るべきものの話です。

サロンのキャッシュレス決済、どう選ぶ? 手数料と入金サイクルの見方


おわりに

長くなってしまったので、最後にぎゅっとまとめます。

1, 確認は全部、契約の前に終わらせる

2, マンション型なら、「事務所使用OK」でも油断しない。管理会社に確認してもらう

3, 担当者のやる気で結果が変わる。合う人が見つかったら、そこに絞る

4, 電気容量と保健所、この2つだけは絶対に飛ばさない

5, 家賃の安さではなく、総額で判断する

6, 居抜きは「安い」とは限らない。設備の年数を確認する

7, 初期費用は交渉できる。言うのはタダ

分からないことだらけで当たり前です。わたしも、契約書を前にして何度も固まりました。「交渉できる」ということすら知りませんでしたから。

でも、こうして一つずつ確認していけば、ちゃんと自分で判断できるようになります。あなたのお店なのですから、納得して選んでいただきたいな~と、心から思っています。

素敵な物件に出会えますように。


最後にひとつだけ

この記事は一般的な情報をまとめたものです。物件の条件、地域のルール、業種によって、必要な手続きや基準は変わります。

実際の契約や届出にあたっては、宅地建物取引士・保健所・税理士・行政書士など、それぞれの専門家に必ずご確認ください。

※内容は2026年8月時点のものです。

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