居抜き物件の「造作譲渡」とは? 契約前に確認したい7つの落とし穴

物件・契約

※この記事にはPRを含みます。

※内容は2026年8月時点のものです。


「居抜きなら、内装費が浮くから安く開業できる」

物件を探し始めると、必ず聞く言葉だと思います。実際その通りで、うまくいけば数百万円が浮きます。

でも、こういう相談も本当によく耳にします。

「造作譲渡料150万円って言われたけど、これって高いの? 安いの?」

「そもそも造作譲渡って、誰に払うお金…?」

「前のお店の設備、壊れたらどうなるんだろう」

わかります。造作譲渡は、普通に生きていたら一生出会わない言葉ですから。しかも金額が大きいのに、相場が分からない。

ということでこの記事では、造作譲渡の仕組みと、契約前に確認したい落とし穴を7つ、順番に見ていきます。

ちなみに——正直にお伝えしておくと、わたし自身は居抜きではありませんでした。 なので「わたしの体験談」としてお話しできることは少ないです。そのぶん、公的な情報や一般的な商慣習をきちんと調べて、フェアに書くことにします。


  1. 先にお伝えしたい3つのこと
    1. 1, 造作譲渡料は「大家さんではなく、前のお店の契約者」に払います
    2. 2, いちばん怖いのは「原状回復義務」です
    3. 3, 「今すぐ使える」とは限りません
  2. そもそも造作譲渡とは何か
    1. 登場人物は3人います
    2. そして、大家さんの承諾が要ります
  3. 落とし穴① 原状回復義務を引き継がされる ★最大の注意点
    1. 確認すること
  4. 落とし穴② リース・割賦の設備が混ざっている
    1. 確認すること
    2. 造作譲渡に慣れた不動産会社が間に入っているかどうかで、だいぶ変わります
  5. 落とし穴③ 退去時に大家さんへ買い取ってもらえない
  6. 落とし穴④ 前が同業でも、保健所の基準を満たすとは限らない
  7. 落とし穴⑤ 設備の年式を確認していない
    1. 確認すること
  8. 落とし穴⑥ 「なぜ辞めるのか」を聞いていない
  9. 落とし穴⑦ 契約不適合責任を決めていない
  10. 造作譲渡契約書のチェックリスト
  11. 価格の考え方:相場はありません
    1. 造作譲渡料が「0円」になることもあります
    2. 何が言いたいかというと
  12. 意外なメリット:譲り受けた造作は「資産」になります
  13. よくいただくご質問
    1. Q. 造作譲渡料は値切ってもいいの?
    2. Q. 居抜きとスケルトン、結局どっちがいいの?
    3. Q. 造作譲渡の契約書、自分で読める自信がありません
  14. 物件と造作が決まったら、次はお店の仕組みです
  15. おわりに

先にお伝えしたい3つのこと

1, 造作譲渡料は「大家さんではなく、前のお店の契約者」に払います

ここが、最初につまずくところ。お金の相手が2人いると覚えてください。

2, いちばん怖いのは「原状回復義務」です

前のお店が作った内装を、往々にしてあなたが撤去する義務を負うことがあります。これが数百万円になることも。

3, 「今すぐ使える」とは限りません

見た目がきれいでも、設備が寿命間近だったり、そもそも前のお店の持ち物ではなかったりします。


そもそも造作譲渡とは何か

造作(ぞうさく) … 建物にくっついている内装や設備のこと。カウンター、棚、空調、給湯器、照明、シャンプー台など。基本的に取り外しが容易ではないものです。

造作譲渡(ぞうさくじょうと) … それらを、前のお店から買い取ることです。

登場人物は3人います

ここが分かると、一気に整理されます。

あなたとの関係
大家さん(貸主)部屋を貸してくれる人。賃貸借契約を結ぶ相手
前のお店の契約者(前テナントのオーナー)内装を売ってくれる人。造作譲渡契約を結ぶ相手
あなた借りる人であり、買う人

つまり、契約が2本、支払い先も2つということ。

契約する相手契約の種類払うお金
大家さん賃貸借契約保証金・家賃
前のお店造作譲渡契約造作譲渡料

「保証金も払ったのに、まだ150万円払うの?」となるのは、この2本立てだからです。

そして、大家さんの承諾が要ります

見落とされやすいのですが、造作の譲渡には大家さんの承諾が必要なのが一般的です。

賃貸借契約には「借主が勝手に造作を設置・譲渡してはいけない」という条項が入っていることが多いためです。前のお店と2人だけで話がまとまっても、大家さんがNGと言えば成立しません。

必ず、大家さんの承諾を書面でもらってください。 口約束はあとで揉めます。


落とし穴① 原状回復義務を引き継がされる ★最大の注意点

ここがいちばん怖いところです。

原状回復(げんじょうかいふく) … 退去するとき、借りたときの状態に戻して返すこと。

店舗の賃貸借では、スケルトン(何もない状態)に戻して返す契約が一般的です。

ここで問題になるのが、「借りたときの状態」がどこを指すのか。

  • ❌ あなたが入居したとき(=内装がある状態)に戻せばいい
  • スケルトンに戻せ = 前のお店が作った内装まで、あなたが撤去する

後者だと、自分が作っていない内装の撤去費用を、あなたが負担することになります。数十万〜数百万円。

『え、わたしが作ったんじゃないのに…!?』となりますよね。でも、契約書にそう書いてあれば、そうなります。

確認すること

賃貸借契約書の原状回復条項を読んで、こう聞いてください。

「退去時の原状回復は、どの状態に戻す契約になっていますか? スケルトンですか、それとも現状(造作がある状態)の引き渡しでよいですか?」

「現状有姿での返還が可能」と書面で取れれば理想です。次のテナントにまた造作譲渡できる余地も残ります。


落とし穴② リース・割賦の設備が混ざっている

譲り受けるはずの設備が、そもそも前のお店の持ち物ではないというパターンです。

エアコン、給湯器、大型の美容機器などは、リース契約や分割払い(割賦)で導入されていることがあります。 その場合、所有権はリース会社にあるので、前のお店には売る権利がありません。

これを知らずに代金を払ってしまうと、あとからリース会社に引き上げられる、という事態になりかねません。

確認すること

譲渡リストの各項目について、

  • 所有権は前のお店にあるか(リース・割賦の残債はないか)
  • リース中のものがある場合、契約を引き継ぐのか、精算するのか

「所有権は譲渡人に帰属し、リース・割賦・担保設定がないことを保証する」——こういう文言を造作譲渡契約書に入れてもらうのが安全です。

造作譲渡に慣れた不動産会社が間に入っているかどうかで、だいぶ変わります

ここ、けっこう大事なポイントかなと思います。

造作譲渡を日常的に扱っている不動産会社が間に入っている場合、この所有権まわりは確認したうえで引き渡すのが通常の流れです。慣れている会社ほど、リースの残債や所有権の所在をきちんと洗い出してくれます。

逆に危ないのが、当事者同士で直接やりとりするパターン。 知り合いのお店を引き継ぐ、SNSで見つけた、といったケースですね。悪気がなくても、前のオーナーさん自身が「これリースだった」と失念していることがあります。

「知り合いだから大丈夫」がいちばん危ないので、間に入ってもらうか、自分でリストを一つずつ潰すか、どちらかにしましょう。


落とし穴③ 退去時に大家さんへ買い取ってもらえない

「じゃあ、自分が出るときは大家さんに買い取ってもらえばいいのでは?」

そう思いますよね。実は、法律にはそういう権利があります。

造作買取請求権 … 賃貸人(大家さん)の同意を得て取り付けた造作を、契約終了時に時価で買い取るよう請求できる権利。借地借家法33条に定められています。

e-Gov法令検索:https://elaws.e-gov.go.jp/

ただし——この権利は、特約で外すことができます。 そして店舗の賃貸借では、この権利を放棄する特約が入っていることが多いと言われています。

なので、契約書に「造作買取請求権を放棄する」といった一文が入っていないか、必ず確認してみてください。 入っていたら、退去時に買い取ってもらうことは期待できません。

「たぶん大丈夫だろう」ではなく、自分の契約書がどうなっているかを実際に見る。ここは確認あるのみです。


落とし穴④ 前が同業でも、保健所の基準を満たすとは限らない

「前も美容室だったから、保健所は大丈夫でしょう」

これは危ないです。

美容室やまつげエクステは美容師法の対象で、施設の構造や設備に基準があります。そして——

  • 基準そのものが、以前と変わっている可能性
  • 前のお店の届出内容と、あなたのやりたいことが違う可能性
  • そもそも前のお店が、基準ギリギリだった可能性

届出はお店ごとに、あらためて必要になります。 前のお店の届出を引き継げるわけではありません。

必ず、契約前にその地域の保健所へ相談してください。 「この住所で、この設備で、この業種をやりたい」と伝えれば教えてもらえます。相談は無料です!

  • 厚生労働省(生活衛生関係の情報):https://www.mhlw.go.jp/
  • お住まいの自治体の保健所(「〇〇市 保健所 美容所」で検索)

落とし穴⑤ 設備の年式を確認していない

これは物件探しの記事でもお伝えしましたが、あらためて。

居抜きの写真って、本当に魅力的に見えるのですよね。「もう内装できてる! このまま開けられそう!」と。

でも、エアコンと給湯器が寿命間近だったというのは、よくある話です。

造作譲渡料150万円を払った
 ↓
エアコンと給湯器が寿命間近
 ↓
交換で80万円
 ↓
結局スケルトンから作るのと変わらなかった

確認すること

譲渡対象の明細を、リストで出してもらってください。 そして各項目に、

  • 型番・メーカー
  • 設置年(何年使っているか)
  • 動作の状態
  • 保証書や購入時の書類が残っているか

口頭の「まだ全然使えますよ」は、残念ながら当てになりません。なるべく証拠書類(エビデンス)を添えてもらいましょう。


落とし穴⑥ 「なぜ辞めるのか」を聞いていない

これ、聞きにくいのですが、とても大事です。

前のお店が閉める理由には、こういうものがあります。

理由あなたへの影響
移転・拡張(うまくいっている)⭕ 問題なし
家庭の事情、健康上の理由⭕ 問題なし
立地が悪くて集客できなかった⚠️ あなたも同じ壁にぶつかる可能性
近隣とトラブルがあった⚠️ 引き継ぐ可能性
建物自体の問題(設備の老朽化など)⚠️ 要確認

同じ場所で同じ業種をやるなら、前のお店が失敗した理由は、あなたにも降りかかります。

不動産会社さんを通じてで構わないので、聞いてみてください。答えてもらえないこともありますが、聞く価値は十分にあります。


落とし穴⑦ 契約不適合責任を決めていない

契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん) … 引き渡されたものが契約の内容と違っていた場合に、売った側が負う責任のこと。以前は「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」と呼ばれていました。

中古品の譲渡は、「現状のまま引き渡す(現状有姿)」が原則です。つまり、引き渡し後に壊れても、前のお店は責任を負わないのが基本。

でも、引き渡し直後に給湯器が壊れたら、さすがに納得いきませんよね。

なので、造作譲渡契約に「引き渡しから◯ヶ月以内に故障した場合は、譲渡人が修理費を負担する」といった保証の文言を入れてもらえると、ぐっと安心です。

もちろん、相手が応じるとは限りません。でも、言ってみる価値はあります。 言うのはタダですから!


造作譲渡契約書のチェックリスト

契約書を前にしたら、この7点を確認してください。

  • 譲渡対象の明細(型番・メーカー・設置年・数量が特定されているか)
  • 所有権の保証(リース・割賦・担保がないと明記されているか)
  • 大家さんの承諾(書面で取れているか)
  • 引き渡しの時期と状態(いつ、どういう状態で渡されるか)
  • 契約不適合責任(保証の有無と期間)
  • 退去時の原状回復の範囲(賃貸借契約書のほうで確認)
  • 造作買取請求権(放棄の特約が入っていないか)

価格の考え方:相場はありません

「造作譲渡料の相場はいくらですか?」

よく聞かれるそうですが、明確な相場はないというのが正直なところです。設備の内容も年式も物件ごとに違うので、比べようがないのですよね。

ただ、価格が動きやすい状況はあります。

状況価格への影響
前のお店が早く退去したい(次の契約が決まっている等)下がりやすい
募集期間が長く、買い手がついていない下がりやすい
設備が新しく、人気の立地下がりにくい
複数の希望者がいる下がりにくい

そして、造作譲渡料も交渉の対象です。

「この設備は使わないので、その分を引いてもらえませんか」という交渉の仕方もあります。使わないものにお金を払う必要はありませんし、そもそも使わない設備は、あなたが撤去することになるかもしれません。

造作譲渡料が「0円」になることもあります

ここ、知っておくと交渉の見え方がまるっきり変わります。

思い出してください。落とし穴①でお話しした通り、退去する側にも原状回復義務があります。 つまり前のお店は、出ていくときにスケルトンに戻す費用を負担するのが原則。これが数十万〜数百万円かかります。

ここで、次に入る人が造作をそのまま引き継いでくれたら、どうなるでしょう。

次に入る人が造作を前のお店の負担
引き継がないスケルトンに戻す工事費を自腹で払う(例:200万円の出費)
引き継ぐその工事費が丸ごと不要になる(±0円)

前のお店にとっては、造作譲渡料をもらうことより、原状回復費用を払わずに済むことのほうが大きい——そういう状況が普通に起こります。

だから、「造作譲渡料0円でいいので、そのまま使ってください」というケースが実際にあります。売る側にとっては、0円でも十分すぎるほど得なので。

何が言いたいかというと

「造作譲渡料は必ず払うもの」だと思い込まないでほしい、ということです。

前のお店が置かれている状況によって、金額はゼロにも数百万円にもなります。提示された金額を、定価だと思わないでください。

「原状回復のご負担はどうなっていますか?」と聞いてみると、相手の事情が見えてくることがあります。そこから交渉の糸口が生まれるかもしれません。


意外なメリット:譲り受けた造作は「資産」になります

ここはあまり語られないのですが、知っておくと得です。

造作譲渡料として払ったお金は、その年の経費として全額落とせるわけではありません。 譲り受けた設備はあなたの資産になり、減価償却という形で、何年かに分けて経費にしていきます。

減価償却(げんかしょうきゃく) … 高額なものを買ったとき、その金額を数年に分けて経費として計上していく仕組みです。

「じゃあ損では?」と思われるかもしれませんが、そうとも限りません。中古の資産には、耐用年数を短く見積もれる計算方法があり、新品を買うより早く経費にできる場合があります。

ただ、正直に申し上げるとこの計算はけっこうややこしいです。 譲渡明細をどう資産として分けるかによっても変わります。

開業のタイミングで税理士さんに一度相談しておくと、この処理を含めてまとめて整理できます。 相談だけなら無料のところも多いので、聞いてみる価値はあると思います。

📖 あわせて読みたい

税理士に頼むかどうか、費用はいくらか。開業のときにしか決められないことを整理しました。

サロンに税理士は必要? 自分でやる場合との違いと、費用の目安


よくいただくご質問

Q. 造作譲渡料は値切ってもいいの?

いいと思います。 定価があるものではありませんし、交渉の余地は普通にあります。

ただ、相手も次の場所への引っ越し費用などを抱えていることが多いので、極端に叩くと話がまとまらなくなります。 「この設備は使わないので」など、理由をつけて交渉するのが現実的かなと思います。

Q. 居抜きとスケルトン、結局どっちがいいの?

「どちらが安いか」ではなく「どちらが自分に合うか」で考えるのがおすすめです。

居抜きが向くスケルトンが向く
内装のこだわりそこまで強くない強い。世界観を作りたい
開業までの時間早く開けたい時間をかけられる
資金初期を抑えたい初期にかけられる
業種前と同じ・近い前とまったく違う

前のお店と業種が違うほど、居抜きのメリットは減ります。 結局作り直すことになるので。

Q. 造作譲渡の契約書、自分で読める自信がありません

無理に一人で判断しなくて大丈夫です。

金額が大きい契約なので、不安なら専門家に見てもらうのが安全です。行政書士さんや弁護士さんに契約書のチェックだけ依頼することもできます。

数万円かかったとしても、数百万円の失敗を防げるなら安いものだと、わたしは思います。


物件と造作が決まったら、次はお店の仕組みです

居抜きで開業する場合、スケルトンより準備期間が短くなります。 これは大きなメリットですが、裏を返すとバタバタしやすいということでもあります。

特に、これらは開業日までに間に合わせる必要があります。

決めるものなぜ早めに動くべきか
キャッシュレス決済審査に時間がかかります。 間に合わないと現金のみでのオープンに
レジ(POSレジ)売上の記録。確定申告のときに効いてきます
予約システム施術中に電話が鳴り続ける生活を避けるために
会計ソフト開業初日からの記録が必要です
税理士に頼むかどうか造作の資産計上・減価償却の相談も含めて

居抜きは「早く開けられる」のが魅力ですが、仕組みの準備だけは前倒しで進めておきましょう。

📖 あわせて読みたい

造作譲渡料まで含めたお金の全体像は、こちらにまとめています。

サロン開業のお金、結局いくら必要? 費用の全体像を分解します

決済端末は審査に時間がかかります。居抜きで開業を急ぐなら、特に早めに動いてください。

サロンのキャッシュレス決済、どう選ぶ? 手数料と入金サイクルの見方


おわりに

長くなったので、大事なところをもう一度。

1, 造作譲渡料は大家さんではなく前のお店に払う。契約が2本ある

2, 大家さんの承諾を書面でもらう

3, いちばん怖いのは原状回復義務。「どの状態に戻すのか」を必ず確認

4, リース・割賦の設備が混ざっていないか確認する

5, 設備は型番と設置年をリストでもらう

6, 前のお店が辞める理由を聞いてみる

7, 契約不適合責任の文言を入れてもらう。言うのはタダです!

8, 造作譲渡料は0円になることもある。 提示額を定価だと思わない

居抜きは、うまくハマれば本当に強い選択肢です。数百万円が浮いて、開業も早まる。

ただ、「安く見えるもの」ほど中身を確認する必要がある、というのはどの世界でも同じかなと思います。焦らず、一つずつ確認していきましょう。

あなたのお店が、いい形でスタートできますように!


最後にひとつだけ

この記事は一般的な情報をまとめたものです。契約の内容、地域のルール、業種によって、必要な手続きや責任の範囲は変わります。

実際の契約や届出、税務処理にあたっては、宅地建物取引士・保健所・税理士・行政書士・弁護士など、それぞれの専門家に必ずご確認ください。

※内容は2026年8月時点のものです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました