※内容は2026年8月時点のものです。
「マンションの一室で、小さくサロンを始めたい」
物件を探し始めた方から、いちばんよく聞く言葉です。家賃を抑えられますし、路面店ほど大がかりにならない。わたしも、まさにそう考えて探していました。
そして物件サイトを開いて、こう思うはずです。
「あ、『事務所使用OK』って書いてある物件、けっこうあるじゃない!」
……ここが、落とし穴なのです。
本日は、「事務所使用OK」と書いてあるのにサロンでは断られるという、探し始めてすぐぶつかる壁についてお話しします。知っているかどうかで、探す効率がまるっきり変わります。
わたしがぶつかった壁
わたしはマンション型のサロンを開きたくて探していました。なので、SOHOや事務所使用OKと書かれた物件を中心に見ていたのですが、不動産会社を通じて問い合わせてもらうと、こう返ってくるのです。
「従業員だけならいいけど、不特定多数のお客さんが出入りするサロンを用途とするなら認められない」
これが本当に多く、体感で、50件中2、3件しかサロンとして使わせてもらえませんでした。
つまり、ネットに「事務所使用OK」と大きく書いてあっても、管理会社に「ネイルサロンできますか?」と聞いた瞬間に「無理ですね」と返ってくるわけです。
『え、事務所はよくてサロンはダメなの…!?』と、当時のわたしは思いました。
(これは10年近く前の話なので、今は変わっている部分もあるかもしれません。そこは差し引いて読んでいただけたら…!)
なぜ「事務所」はよくて「サロン」はダメなのか
理由は、建物にとっての意味がまるで違うからです。
| 事務所 | サロン | |
|---|---|---|
| 出入りする人 | そこで働く数人だけ | 知らない人が毎日入れ替わる |
| 頻度 | 決まった人が毎日 | 不特定多数が日に何組も |
| 他の住人から見ると | 顔を覚えられる | 誰だか分からない人が出入りする |
マンションには、当然ほかに住んでいる方がいます。その方たちからすると、知らない人が毎日出入りするのは不安材料であるということ。
セキュリティの面もありますし、共用部(エントランス、エレベーター、廊下)の使われ方も変わります。だから、管理規約や管理組合の判断ではねられます。
管理規約(かんりきやく) … そのマンションのルール集です。
管理組合(かんりくみあい) … そのマンションの持ち主たちで作る、運営のための組織です。
いちばん大事なこと:大家さんのOKだけでは足りません
ここ、絶対に覚えて帰ってほしいところです。
- ❌ 大家さんが「いいですよ」と言った → 契約できる
- ⭕ 大家さん + 管理規約 + 管理組合、すべてクリアして初めて契約できる
大家さんは、その部屋の持ち主にすぎません。建物全体のルールを決めているのは管理組合です。
大家さんが良いと言っても、管理規約で「住居専用」となっていれば営業できません。大家さん自身が「うちの規約どうなってたかな…」と把握していないケースもあります。
必ず、書面で確認してください。 ここは口約束が一番危ないところです。
だから「担当者のやる気」で結果が変わります
「事務所使用OK」の物件を100件見つけても、実際に契約まで至れるのはそのうち数件。
その数件をあぶり出す作業が必要になります。管理会社に1件ずつ「サロンとして使えますか」と確認していく、地道な作業です。
そして——これをやってくれる担当者と、やってくれない担当者がいます。
わたしは最初、数社の不動産会社に並行してお願いしていました。でも、
- 連絡が速い
- 伝えた条件で、自分から色々探して共有してくれる
この2つを満たす担当者がいた1社に、すぐ絞りました。結果、そこを通じて契約しています。
複数社に頼むのは最初だけでいい、というのがわたしの結論です。合う担当者が見つかったら、そこに集中したほうが早い。
無駄足を減らす、最初のひと言
問い合わせの時点で、こう伝えておいてください。
「不特定多数のお客様が出入りする(1日に◯人ほどのお客様が来店される)、サロンとしての使用です。管理会社さんに確認していただけますか」
最初にこれを言っておけば、内見してから断られるという一番辛いパターンを避けられます。
「1日に何人来るか」を添えるのがポイントです。規模感が伝わると、判断がしやすくなります。 1日3~4人と、1日20人では、建物にとって意味が変わってきますので。
不動産会社に伝えるときの4点セット
1, 業種を具体的に(ネイル/まつエク/エステ/リラク)
2, 予算の上限を正直に
3, 希望エリアと広さ、1日何人ほど来店予定か
4, いつ開業したいか
4は本気度が伝わって、優先して連絡をもらえるようになります。
通りやすい物件には、傾向があります
絶対ではありませんが、こんな傾向があるように思います。
比較的通りやすい
- 1階の物件(共用部を通る距離が短い、他の住人と動線が交わりにくい)
- もともと店舗・事務所が入っている建物(前例がある)
- オーナーが1人で建物全体を持っている物件(=管理組合がない。判断が早い)
- 専用の入口がある(エントランスを通らずに入れる)
厳しいことが多い
- 分譲マンション(管理組合が強く、住人の目も厳しい)
- 高層階
- ファミリー向けの物件
- 管理規約に「住居専用」と明記されている
特に「オーナーが1人で建物全体を持っている」は狙い目かなと思います。管理組合を通す必要がないので、大家さんの判断だけで決まることがあります。不動産会社さんに「一棟所有の物件はありませんか」と聞いてみるのも手です。
自宅マンションでサロンを開く場合も、同じです
「借りるんじゃなくて、自分が住んでいるマンションで開けばいいのでは?」
そう思いますよね。でも、ここも同じ壁があります。
分譲マンションでも、管理規約で「住居専用」となっていれば営業できません。 自分の持ち物であっても、建物全体のルールには従う必要があります。
そして自宅サロンには、もうひとつ現実的な問題があります。
- 住所を公開することになる(プライバシー、防犯)
- 家族との生活が施術中に見えてしまう。お客様が生活感を感じるとリピートされにくいので、かなり工夫が必要
- 表札やポストで本名が分かる
- 家賃の消費税の扱いが変わってしまう
最後の一つ、少し補足します。住まいとして借りている部屋の家賃には消費税がかかりませんが、事業用の家賃は課税対象です。住居用で借りた部屋を黙って事業に使うと、大家さん側の申告にも影響します。自分だけの問題では済まないというわけです。
対策として「予約時にのみ住所を伝える」という運用をされている方も多いです。ただ、管理規約の確認だけは、必ず先にやってください。 あとから住人の方に指摘されると、住みながら揉めることになります。
【実体験】コロナ禍で分かった、「ちゃんとやっておく」ことの価値
ここ、余談のようでいていちばんお伝えしたい話かもしれません。
数年前のコロナ禍のとき、自宅マンションサロンは軒並み店じまいをしたり、コロナにおびえながら営業を続けたりしていました。
その理由は、そのマンションで営業することを届け出ていなかったり(税務署への開業の不申告)、そもそも営業の許可を取っていなかったりしたことが背景にあります。
というのも、コロナが蔓延した際、一時的に店を閉めることで公的な支援金を受け取れる制度がありました。わたしも不安になりながら、数ヶ月お店を閉めることができました。
しかしながら、申請時には開業届はもちろん、営業を許可されている旨の記載がある賃貸借契約書の提出が必須だったのです。
事業用の賃貸借契約書には必ず、どのような事業を用途としているかを記載する箇所があります。
つまり——こそこそ隠れて営業していたサロンは、店を閉めれば当然入金の見込みがなくなります。 支援金の申請もできない。だから、営業を続けるほかなかったのです。
しなければならないことを、真面目にしっかり行動していれば、何かあったときに国や都道府県は助けてくれます!
…が、そこを無視してしまうと、いざというときに自分の首を絞める結果となります。ルールは守って開業しましょう。
⚠️ 注意:ここで触れた支援金は、コロナ禍という非常時に設けられた時限的な制度で、現在は終了しています。同じ制度が今あるわけではありません。
ただ、「届出をきちんとしていた人だけが対象になる」という構造は、公的な支援に共通する考え方です。何かあったときに手を挙げられる状態でいるために、開業届と契約書の用途の記載は、きちんとしておいてください。
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開業届や青色申告の届出には期限があります。あとから遡れないものが多いので、開業前に一度確認しておいてください。
それでも見つからないときの選択肢
正直、マンション型は簡単ではありません。 50件中2〜3件という体感は、大げさに言っているわけではないのです。
なので、並行して他の選択肢も見ておくと、精神的に楽かもしれません。
| 選択肢 | 特徴 |
|---|---|
| シェアサロン・面貸し | 什器まで用意してもらえているので初期費用がほぼゼロ。まず顧客を作ってから独立、という順番にできる |
| レンタルスペース | 曜日限定で始められる。副業から始める人にも |
| 1階のテナント物件 | 家賃は上がるが、用途の制約は少ない。看板も出せる |
| 雑居ビルの一室 | マンションより用途に寛容なことが多い |
「マンションの一室」にこだわりすぎない、というのも一つの答えかなと思います。わたしは結果的にマンション型で契約できましたが、そこに至るまでかなりの数を当たっています。
よくいただくご質問
Q. 内緒でやってしまう人もいると聞きますが…
おすすめしません。
上に書いたコロナ禍の話が、まさにそれです。契約違反になりますし、発覚したときに退去を求められる可能性もあります。内装にお金をかけたあとで出ていくことになったら、目も当てられません。
それに、看板も出せず、SNSに住所も載せられない状態で集客するのは、想像以上に苦しいです。あなたが既にネイリストとして著名な方なら別ですが、堂々と営業できる場所を探すほうが、結局は近道だと思います。
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看板が出せない物件だと、集客をまるごとネットでまかなうことになります。その組み立て方はこちらに。
Q. 「SOHO可」と「事務所使用可」は違うの?
明確な定義があるわけではないのですが、どちらも「不特定多数の来客」までは想定していないことが多いです。
「SOHO可」は、在宅ワークや個人事業主の作業場としての利用を指していることが多い印象です。どちらにせよ、必ず個別に確認してください。
Q. 契約後に管理組合から言われることはある?
可能性はゼロではありません。だからこそ、契約前に書面で確認しておくことが大事です。
「口頭で大丈夫と言われました」だけだと、担当者が変わったときに話が振り出しに戻ることがあります。やりとりはメールで残し、契約書にその旨も記載してもらうのがおすすめです。
まとめ
1, 「事務所使用OK」でも、サロンは断られることが多い
2, 理由は「不特定多数の出入り」が建物にとって別の意味を持つから
3, 大家さんのOKだけでは足りない。 管理規約と管理組合を必ず確認
4, 問い合わせの時点で「サロンとしての使用です」と先に伝える
5, 1日何人来るかも添えると判断してもらいやすい
6, 担当者のやる気で結果が変わる。 合う人が見つかったら、そこに絞る
7, 一棟所有の物件、1階、専用入口ありは比較的通りやすい
8, 見つからないときは、シェアサロンや1階テナントも視野に
9, 隠れて営業しない。 いざというとき、公的な支援に手を挙げられなくなります
正直、心が折れそうになる作業です。「また断られた」が続くと、『わたしのやりたいことって、そんなに無理な話なのかな…』と思えてきたりもします…
でも、通る物件はちゃんとあります。 わたしも最終的には見つかりました。数を当たること、そして一緒に探してくれる担当者を見つけること。 この2つだと思います。
あなたのお店の居場所が、見つかりますように!
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物件が見つかったあとに確認したいことは、こちらにまとめています。電気容量や保健所への相談など、契約前に潰しておきたい項目を12個そろえました。
居抜きの物件を検討されるなら、造作譲渡の話も先に読んでおいてください。
最後にひとつだけ
この記事は一般的な情報をまとめたものです。物件ごとに管理規約の内容も、管理組合の判断も異なります。
実際の契約にあたっては、不動産会社・管理会社・宅地建物取引士に必ずご確認ください。 業種によっては保健所への届出も必要です。
※内容は2026年8月時点のものです。

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